大人の発達障害 4   (連載 発達障害 ⑫ ) 

連載 発達障害 ⑫
大人の発達障害 4

青木 道忠
(子ども若もの支援ネットワークおおさか顧問)

 有名大学の理工科系を卒業されたTさん。技術者として今の会社で、四十年近く働いておられます。しかし、片づけができず、家の中は書類や衣類が一杯に広がって足の踏み場もないと言います。相談にこられたTさん夫人のお話では、結婚当初からそういう傾向はあったそうです。それがひどくなってきたのはTさんが管理職に昇進し、隣の県にある工場に転勤した四十歳頃からだということです。

ひどくなったのは片づけだけではなかった

「転勤したての頃は、『昇進とも重なって、時間的にも気持ちの上でもゆとりがないからだろう。落ち着いたらちゃんとしてくれるに違いない。』と思っていました。しかし、その気配が全くなく、だんだんひどくなっていったのです。実は、ひどくなったのは、片づけだけではないのです。」

「夫は、もともと若い時から無口で、必要なこと以外自分から話さないタイプでした。でも、相談はできていました。自分の意見を押し付けたり、こみいった話になると『勝手にせえ』とほうりだしたりするところはありましたが、彼なりに応えようとしてくれていたと思います。

ところが、昇進し転勤した頃から、話かけるとしかめっ面をして、あからさまに避けるようになりました。それだけではなく、だんだん怒りっぽくなってきています。穏やかにしているなと思っていると、些細なことで急に怒りだしたり、詳しく聞かれたり批判されたりすると怒鳴って部屋にはいってしまうのです。」

意外だった同僚の話

 そう話される夫人に、Tさんの職場における様子についてお聞きしました。片づけや人間関係等、うまくいっているのか気になるところです。

「夫との会話がそんな調子ですから、職場の様子はほとんどわかりません。ただ、相手の立場、気持ちを汲むことが苦手な夫のことですから私も心配になって、数年前に夫と同期で同じ工場の方にそれとなく様子をお聞きしました。そのお話では、机の上はそんなにひどくないし、職場の人との人間関係も仕事に支障がでるようなことにはなっていないということでした。安心した反面、意外でもありました。」

(この項、つづく)

(教育相談おおさか 会報『わかくさ』第19号 2017.5.2)