教育相談おおさか 第5回総会開かれる

教育相談おおさか 第5回総会開かれる

 4月15日、「教育相談おおさか」の第5回通常総会を開催しました。総会は正会員である相談員によって毎年開かれ、1年の活動を振り返り、新年度の活動を決めます。2016年度の活動の主なまとめと17年度の方針を次のように話し合って決めました。

(理事長:柚木健一)

❉ 相談活動  2016年1月~12月までの相談は、延べ1080人以上で、学籍のない子ども・若者についての相談が半数を超えています。相談員は来談の保護者との相談では、本人のあり様をわかろうとする態度で接することや、回復する力は本人が持っていて、その力が発揮できるように本人にとって安心感が持てるように家庭が居場所となるような援助の立場に立つことを基本にしながら、保護者ご本人が安心感と見通しを持たれるように丁寧に応じてきました。ご家庭でのこのような援助によって次第に回復へのステップを歩み始めている子ども・若者の例も多く見られます。

❉ 家族交流会 社会的ひきこもりで来談されている保護者を対象とした家族交流会は4月で10回目となります。交流会は毎回20名を超える参加で、村上相談員の講演と2つのグループに分かれての交流で家族の方々が学ばれています。 参加されている保護者は次のように感想を語っておられます。「村上先生のお話しはよくわかりすごく勉強になりました。これからも息子に寄り添っていきたいと思います」「今まで親の勝手で世間と比べて指導してきたようです。いつも焦る気持ちがあったが、子どもは苦しんでいること、居場所として心地よくすること、分かってやろうとすること、子どもに謝らなければと思いました」「親の不安、わが子の将来のこと、みなさんのお話しを伺ってウチだけではないと楽になった」

❉ 相談員の研修 相談員は理論や事例に基づく研究(仮名扱いなど守秘義務は厳格に守って)などの研修にも努力しています。また、大阪、地域そして全国の登校拒否を克服する会・交流会に参加して保護者の皆さんの報告にも学んでいます。

❉ 地域での「講演と個人相談会」

 このとりくみを始めて3年目となりました。2016年度は、12月に八尾市と寝屋川市、2017年1月に大阪市天王寺区と高槻市、2月に堺市の5カ所で開催し、全体で相談員も含めて220名の参加があり、30組の個別相談に相談員が応じました。各地で登校拒否を克服する会・地域交流会が共催団体として世話人さんには準備からともにとりくんで頂きました。あらためて感謝します。参加された方からは「初めての参加でしたが、家から出られなくなって10年の息子(24歳)、私が少し焦ってきていることを再確認できました。自分の為にも息子の為にも、また足を運ぼうと思いました。ゆっくりと安心できる家庭・家族であり続けたいです」などの感想が寄せられ、好評を得ています。

 3年間、公益財団法人大阪コミュニティ財団の事業助成を受けて開くことができました。また、開催の市や教育委員会、社会福祉協議会の後援を得ることも年々増えていきました。16年度は、八尾市で八尾市文化事業団との共催、高槻市で高槻教育文化センターの全面的な支援や市PTA協議会の協力、堺市での堺子育て教育ネットなど公的な機関や民間団体の支援・協力がさらに広がりました。また、各市の教職員組合にも広報案内などに協力を頂きました。「教育相談おおさか」のこのとりくみに関心が高まっていることと、地域で開催して相談につながる家庭がまだまだおられることを相談員は実感しています。

 こうした経験と教訓に立って17年度も開催の方向で検討を進めているところです。

❉ 30周年記念誌の発行

 教育相談が始まって2015年で30年が経ちました。この年から相談員が分担して2冊の記念誌発行の準備にかかり、1年半をかけて2016年11月に発行することができました。
「教職員アンケート調査」は15年夏から学校を訪問するなど、直接先生方に協力を頼み、府内で519名の先生が応じて下さいました。そのデータの分析と自由記述に書かれていることを紹介して冊子にまとめました。

 「30年のあゆみ」は30年の歴史をたどって相談活動の教訓を理論としてまとめること、得られた相談の理念を整理すること、そして現在の登校拒否と社会的ひきこもりの解決の方向と相談のあり方についての課題をまとめました。いまはその普及に努めているところです。とくに「アンケート調査」は学校を中心に次第に広がっています。なお、「アンケート調査」の内容について各地で報告会を開き、「教育のつどい大阪」(教育研究集会)の分科会で報告したところ、今年夏に開かれる全国の「教育のつどい」の分科会で発表することになっています。

❉❉ 2017年度の重点は ❉❉

○ 教育と社会が子ども・若者に与える影響を知ること

 大阪では中学生1年生から3年生まで毎年1回の「チャレンジテスト」で高校入試の内申点を決める、小中学生に「学校安心ルール」「学校スタンダード」で子どもを縛る、高校では「学校つぶし」が進む一方、全国的には「学力テストの成績公表」、次期学習指導要領によってこれ以上ない学習時間の詰め込み・道徳の教科化など、教職員は多忙化と評価・管理のもと懸命な努力をしていますが、子どもの荒れや不登校がさらに増える事が懸念されます。若者もまた奨学金の返済負担や雇用破壊による「生きづらさ」は増すばかりです。貧困問題が子ども・若者に深刻な影響を及ぼしています。このような事態をよく知ってその解決策を考えると共に、日常の相談活動にあたることを大切にします。

○ 地域の「講演と相談会」の広報などで学校訪問をして教育現場との関係を深めます

○ 日常の相談活動はじめ、「講演と相談会」、相談員の講師派遣などの広報にホームページを活用するなどさらに力を入れます

○ 家族交流会に続いて「登校拒否についての講座」を開くようにします

○ 「社会的ひきこもりの理解と援助」についての冊子を発行します

○ 相談室の維持・運営など「教育相談おおさか」の財政はきびしく、賛助会員のみなさまの協力と新たに賛助会員に加わって頂くように広く協力を求めていきます

(教育相談おおさか 会報『わかくさ』第19号 2017.5.2)